【店舗プロデュース/ブランディング】総合美容サロン「one beauty suger」
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鳥取県琴浦町にあるトータルビューティーサロン「suger(シュガー)」さんの店舗プロデュースをさせていただきました。ブランディング全体のプロデュースも含めて関わっていますので店舗、ショップカード、
名刺、HPなど、統一したイメージを作ることができます。このページでは空間の方のお話を少々。
家具の買い付けにも走り回って、店内の雰囲気を作りました。素敵な家具でしょー。
アンティークを使うとコテコテのイメージになりがちですが、所々に「外し」を入れています。「ドヤっ」という感じではなく「抜け感」「こなれ感」を大切にしています。
モノを扱うのではなく、空気を扱うのが私たちの仕事です。
その意味で、このデカいバケツは良い仕事をしてくれています。異物感と調和の狭間を行ったり来たりして、この空間の感じ方を調整してくれるアイテムです。中間管理職みたいです。
この辺りのキャビネットもヨーロッパのどこかのものですが、アンティークと呼ぶには若かったり、ちょっとチープ感があったりして、重厚な方に行きがちな空気たちを薄めるというか、和らげるような役目をになってくれています。
スタッフさん達のお人柄や地域の雰囲気、そしてこれから作るお店の備品デザインをするときのことも考えて、イメージを固定化するのではなく、いろいろやってもやっぱりシュガーはシュガーだねと言われるような懐(ふところ)を仕込んでおきたかったのです。
個室への入り口は黄金の石が降り注ぐアーチ開口。アーチの丸み加減にもこだわり、その向こうにあるワッフル型のアンティーク照明とリンクするようにしました。
照明から降り注ぐように配置された黄金の石は一つずつ手作りで塗装屋のINOさんが施工してくれました。
出来上がるまではどんなイメージになるか想像できないところもありましたが、想像以上の出来栄えに喜んでいます。センスの良い提案をしてくれたINOさんには感謝です。
ロッカーは改装前からあるものをそのまま使っています。写ってないですが、その隣には同じく20年ほど使われたと思われるスチールロッカーがあります。
その方々はこの場所の大先輩。再び帰る場所を用意してあげないといけないという使命感もあったりして、床や壁の色や質感を考えたり、新しくやってくる家具たちと喧嘩しないように考えました。
同じところに戻しても、全く違う場所に帰ってきたような感覚になるでしょう。でもそれが心地よいものなら良いなと。そんな意識で取り組みました。
個室へのアーチをくぐるとAIミラーが鎮座しています。こちらは施主さんが用意されたモノですが、鏡であり、パソコンでもある。。AIが自分に似合うスタイルを提案してくれるそうです。スゴイ。。
個室とフロアを隔てる壁にはスタッフさんの目線の高さに覗き穴を作りました。
壁の向こうにあるセット面で接客をしているスタッフさんとアイコンタクトできる仕掛けです。
この窓の向こうにもセット面があり、スタッフさん同士がアイコンタクトできるようになっています。
この窓は解体された日本家屋からいただいてきたモノです。長く私の手元にありましたが、ようやく新しい役目に就いてもらうことができました。
どんなモノを選ぶ時も、モノを扱うのではなく、モノが纏う空気を扱います。
モノを混ぜることはできませんが、空気は混ぜることができます。その混ぜ具合を調整することで「ひとつの空気を空間に留める」。それが私の仕事です。
だから、いろいろなジャンルのモノを無造作に選んでいるように見えても、まとまりを感じさせることができたり、微妙なニュアンスを表現できたりするのです。
階段下に元々あったキッズスペースは子供の秘密基地にしました。大人の目線では見えない天井は子供達だけが知る青空と雲をイメージ。
見えないから拘らなくてもいいじゃないの?とは良く現場で聞こえてくるワードですが、やはり空気は混ざっているので、無視はできません。
ただし、全てに全力で予算を注ぎ込んでいくことはスマートではないので、「空間の出来栄えに適度に配慮する」という意識を心がけています。
この辺りのスペースは、先輩ロッカーたちのことも考えて、ちょっとファニーで可愛げのあるゾーンにしてみました。
子供達のおもちゃとしてレンブロックを使わせていただきました。メーカーの社長さんから「キッズ用の柔らかい素材のもの」をお勧めいただき購入させていただきました。間伐材を使って作られたエコな商品で、
何よりとても可愛いです。工夫と想像が頭の中でいっぱいに膨らむ、とても素晴らしい商品です。写真撮影用にこういったレイアウトにしましたが、思わず夢中でブロックで遊んでしまいました(笑)。。
階段はビンテージ塗装で雰囲気を出しました。塗っては削り、削っては塗り、、手間のかかる作業をしていただきました。
ちょっとマニアックな話ですが、配線にもこだわりました。私がそんなことに頭を悩ませていたことなど誰も知らなくて良いことですが、空気を扱うにはやはり必要なことでした。
こういうオファーにも快く応じてくれた施工担当の井木組さんにも本当に感謝しかありません。急な方針転換も何度かありましたが、その度に親身になって聞いていただき、対応していただきました。
建築に関して、当たり前の事を知らなかったりする私ですが、私の目線まで下がって話をしてくださる素敵な方々でした。ありがとうございました。
階段を上がるとフォトブース、着付けスペース、エステルーム、スタッフルームがあります。
フォトブースはアーティフィシャルフラワーと照明で装飾しました。フラワーアーティストのjunos flowersさんとコラボさせていただき、私が照明を、junos flowersさんにはフラワーアレンジを担当していただきました。
私の要望を聞いていただきつつ、アーティストとして表現もしてもらいたいという無茶な感じでお願いと期待をかけてしまいました。
にも関わらず、このようにしっかりと落とし所に着地させてくれたjunos flowersさんを尊敬します。
照明の方は前後の奥行きや配置の高さなど、不揃いな完成形みたいなものを目指しました。
しかしこれ、アーティフィシャルフラワー(造花)ですが、とてもリアルでびっくりします。不思議なもので、花というのは本物を見ると「絵本の世界みたいだよー」と言いたくなるし、造花を見ると「本物みたいだよー!」と言いたくなります。
現実とバーチャルが入れ替わるような、なんとも言えない感覚になります。
ナンバーがデザインされている可動式の壁。反対側は収納棚になっています。あちら側にある収納室とを隔てるパーテーションの役目と、もう一つの役目を与えています。
それがこれ。着物を選んでもらう時に、どれにしようかなーと言いながら、「私はこれが1番〜」みたいな賑やかなやりとりが行われたら良いなと思いまして、着物を掛けた時に数字が消えないようにデザインしています。
エステルームの壁はDIY用の漆喰をスタッフさん達自ら塗られました。私のプロデュースではこのように施主さん自らも作業していただいたりします。やはり愛着が一層深くなるということがポイントだと思います。
プロに任せれば早くて正確な仕事をしてくれますが、それだけではない価値があります。
多少のムラがあったり、予想外に大変で時間がかかったり。それを失敗とか無駄だと言ってしまうのは、大事な何かを捨てているような気にもなったりして少し勿体無い気持ちになります。
もちろんプロのようにはいきませんが、逆にいうとプロにはできないことができるとも言えます。私はそこに化学反応のようなものが起こせるように、この壁が生きるように光などで雰囲気を作りました。
照明器具はもちろんですが、カーテンの光の通し具合にも気を配りました。店内のカーテンは全てヘイケケさんに制作をお願いし、透け感やプリーツ具合を相談させてもらいました。布のプロはやはり凄かったです。
私の知らない奥深い布の世界を見せていただきました。いい感じで優しい光がさしています。
スタッフルームは少し雰囲気を変えてみました。お客様は立ち入らない場所ですが、見えない場所でも大事にすること。それは効率的ではないですし、生産的でもありません。
ですが、粋なことです。そういう侘び寂びの世界が好きな私です。
最後に外観を。
既存の壁を塗装するのがメインでしたが、古い材木の柱や建物をぐるりと回る帯状の板が素敵だったので、それを残して施工しました。
あとはガーデニングです。この写真を撮影した時はまだ苗を植えたばかりの状態だったので、どんなガーデンなのか分かりにくいですが、
実はここは数年単位で完成に近づくガーデンです。T's GARDENさんにお世話になり、これから少しずつ育てていく予定です。
本当は建物の完成時に植物も完成しているのが店舗営業にとっては良いことなのかも知れません。
でも、人間の時間と植物の時間は違うものですので、こちらの都合で植物に合わせてもらうより、植物の成長とともにお店も歩んでいくようなストーリーの中でなら、よりお店は素敵に輝くはずだと思いました。
子が親になり我が子を連れて来るようなお店でもありますので、来られるお客様にとっても、季節や時の移ろいを無意識にでも感じていただけるのではないかと思うです。
今回20周年記念として今回の改装とブランディングのオファーをいただきました。
ですので、これからの20年を見据えてシュガーさんと取り組み、こうして素敵な空間にすることができました。
私の提案を信じて受け入れ、任せてくださったシュガーさんには本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
ありがとうございました!
最後に少しだけ改装前の写真をどうぞ。